学舎に吹く風 ~教育環境の質を高め続ける、学校法人宇部学園~

環境を整え、学びの質を高める。
地域に貢献できる人材を送り出すために。

 少子化が社会問題として大きくクローズアップされる今日、山口県も例にもれず、重要な課題の一つとして掲げています。学校運営においては、廃校、統合など、各地で深刻な問題となっています。そんな中、教育理念に「至誠」を掲げ、日本の未来を担う子どもたちに、より質の高い学びを提供したいと挑戦・成長を続ける学校があります。今回は、私たちがお手伝いしている学校法人宇部学園の取り組みをご紹介します。

昭和20年の設立以来、教育理念「至誠」を貫く

 学校法人宇部学園は、初代理事長・二木謙吾氏により、昭和26(1951)年、私立学校法に基づく学校法人として山口県宇部市に設立され、永く実践系の女子校を運営してきました。
 現在は、宇部市・山口市・美祢市にて、大学、高校、中学、幼稚園、自動車学校の7つの教育施設を設置・運営し、創立者の生涯にわたる信条「至誠」を教育理念に掲げ、一人ひとりの独創性を尊重し、志を持ち、社会に貢献できる人材の育成を目指しています。
 また、歴史や伝統を守りつつも、常に質の高い学びの提供、豊かな心の育成を志し、挑戦・成長を続けるその姿勢と発展の様子は、山口県内でも有数の学校法人として一目置かれる存在となっています。

迫りくる本格的な少子化に、魅力ある学校づくりで対策

 全国で少子化が取りざたされる今日において、学校法人宇部学園が運営する教育機関には、学びに対して意欲旺盛な、優秀な学生が集まっています。しかし、教育機関は18歳以下の人口が急激な減少期に突入する2018年問題を目前に、さらなる改善に迫られているのが現実です。少子化の影響で受験生の絶対数が減少し、子どもたちの数に対して、学校の数が多いと言われる時代になります。
 今後は「学生が集まる学校」と「学生が集まらない学校」の二極化が進むと予想され、より質の高い学びが提供できる学校、快適な環境が用意されている学校など魅力づくりが必須とされ、「選ばれる学校」として残ることが重要な課題となっています。
 学校法人宇部学園では、他校に先駆け、10年ほどの月日をかけて各教育機関の校舎改修を行い、今年完成を迎えました。学びの環境を整えることで、より魅力ある学校づくりに尽力してきた挑戦の10年間でもありました。

単なる耐震対策ではなく、学びの環境をより快適に

 校舎は老朽化を考慮し、一般的に50年程度で建て直されます。慶進中学校・高等学校の最も古い校舎も老朽化が進み、また、耐震基準が改訂されたことにより、建て直しが必要となりました。生徒数の増加に伴い、増築を繰り返してきた校舎群は築年数も異なり、全体的な動線も考慮されていなかったため、学校全体を見直そうという計画が2008年に動き出したのです。
 なぜこれまでのような部分改修ではなく、10年もの月日をかける大改修に至ったのか、それは「学びの環境」が与える子どもたちへの影響を考えた結果でした。どんなに素晴らしい教育方法でも、暗く雑然とした教室では子どもたちの学習意欲は上がりません。イギリスのサルフォード大学の研究によると、教室の環境デザインが子どもの学習率に25%も影響するという結果が出ています。(※「日経アーキテクチュア」2013年3月5日記事より)
 慶進中学校・高等学校では、設計の段階で校内の移動のしやすさを優先して動線を確保し、学校全体の快適さを追求しました。さらに、完成後だけでなく、建設中の学習環境も考慮し、工事の進め方にも工夫がなされました。具体的には、第一期工事で手がける1つ目の校舎を、以前より大きな校舎へと建て替え、第二期工事以降は、拡大した校舎に教室を順番にスライドする形で進めたのです。
 これは、どのタイミングの在学生も仮設教室を使用せず、整った環境で学習してもらうためです。こうした全面的な建て替えは、学校全体の快適度を高めたばかりか、明るく開放的なイメージへと変貌させ、理想的な学習環境へと導きました。
 いわば、これらの改修は単なる老朽化や耐震の対策ではなく、将来の少子化を見据え「選ばれる学校」へと進化するための挑戦のスタートでした。

子どもを通わせたくなる活気に満ちた学校

 今年の3月に生まれ変わった新校舎では、生き生きと学ぶ生徒の姿が見られます。幅3.6mの広々とした廊下、約2.8mの高い天井、統一された壁の色やカーテンなど、整然としながらも温かみのある雰囲気が大切にされています。また、アクティブラーニングの導入を目指し、開放的でオシャレな、自由に使える空間も設置されました。このように移動のしやすさ、使い勝手の良さなどを考慮した構造そのものが、気持ちまでクリアにするようです。実際に学ぶ子どもたちだけでなく、安心して学ばせることができると保護者や地域からの評判も上々です。
 「日常ここで働いている教員やスタッフ、建築会社の視点だけでは、こうはならなかった」と現理事長の二木寛夫氏は言います。この大規模改修には、「快適な学習環境を提供すること」が地域の教育水準を高めることになるという宇部学園の信念に基づき、学校の将来を見据えた工夫が随所に施されています。
 この10年間、慶進中学校・高等学校だけでなく、成進高等学校、山口芸術短期大学、山口学芸大学、宇部中央自動車学校と、学校法人宇部学園の学校施設は改修を進めています。「少子化の波が押し寄せるから規模を縮小するのではなく、今だからこそ施設を充実させ、環境の質を高めることに注力する」。それは、「選ばれる学校」になるばかりか、良い人材を輩出することにもつながります。こうして地域と日本の将来に貢献することこそが、学校法人宇部学園の今後も続く使命です。

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